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大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)2923号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

第三免責について

一「飲酒運転中の事故」の意味

抗弁(一)及び(二)の事実は当事者間に争いがない。<証拠>によれば、本件保険契約は被告会社の売り出した災害倍額保障、定期付養老保険付の「しあわせの保険」であつて、右保険の趣旨は、1 被保険者が死亡したときまたは所定の廃疾状態となつたときは、あらかじめ保険契約者の選択により定めた満期保険金額の二ないし五倍の死亡保険金または廃疾保険金を支払う。2 被保険者が、不慮の事故または法定もしくは指定伝染病を直接の原因として死亡したときまたは不慮の事故を直接の原因として所定の廃疾状態となつたときは、死亡保険金または廃疾保険金に加えて災害保険金または災害廃疾保険金を支払う。3 被保険者が、保険期間満了の日まで生存したときは、満期保険金を支払う。4 被保険者が、不慮の事故により、所定の障害の状態になつたときまたは入院したときは、傷害給付金または入院給付金を支払う。というものであつて、右の趣旨実現のために各条項が規定されていること、これに対し、例外的に保険金を支払わない場合として、第二一条に死亡保険金について、第二二条に廃疾保険金について、第二三条に災害保険金及び災害廃疾保険金についてそれぞれ免責事由が規定されていることが認められる。

右事実によれば、本件保険契約は、被告会社の売り出した災害賠償保障、定期付養老保険付の「しあわせ保険」と称する生命保険であつて、被保険者死亡の場合には、契約により定められた所定の死亡保険金とともに、死亡原因が不慮の事故によるときは死亡保険金に加えて災害保険金が支払われることとなつており、例外として、災害保険金につき、被保険者の犯罪行為によるとき、保険契約者、被保険者または死亡保険金受取人の故意または重大な過失によるとき、被保険者の精神障害または泥酔の状態を原因とする事故によるとき、被保険者の無免許運転中または飲酒運転中の事故によるとき、地震、噴火、戦争その他の変乱によるときに、災害保険金の支払いをしないこととしていることが認められ、右によれば、本件保険契約は被告会社により売り出された保険であつて、契約条項は被告会社において作成されたものであることに鑑みれば、明確性を欠く表現のなされた条項の解釈にあたつては被告会社に不利益に解されてもやむを得ないものというべく、また、右の免責条項が例外規定であつて、厳格に解釈されるべきであるうえ本件契約の趣旨及び「飲酒運転中」以外の免責事由が不可抗力事由を除くといずれも被保険者などの保険者に対する重大な背信行為事由のみを列挙していることを考慮すれば、四八年約款第二三条にいう「飲酒運転中の事故」とは、酒に酔つて正常な運転ができないおそれのある状態で運転されたときの事故と解すべく、五六年約款第七条には四八年約款第二三条とは異なり、被保険者が法令に定める酒気帯び運転またはこれに相当する運転をしている間に生じた事故というように免責条項につき明確な表現がなされたことが認められるけれども、このような約款の変更によつて本件保険事故に適用される約款の解釈を変更しなければならないものも解されない。(参照、昭和四〇年一〇月改訂の自動車保険普通保険約款の解釈につき東京高裁昭四九年七月二九日判決、判時七五四号九〇頁以下。)

二本件保険事故の態様

(一) <証拠>を総合すると次の事実が認められる。<中略>

4 訴外敏明は、普段晩酌もせず酒を好まないものであるが、右田冨方でのもてなしを受けて四人で合計銚子二本位、ビール二本位を飲んだが、訴外敏明の飲酒量としては日本酒を盃に三ないし四杯、ビールをコップ一杯程度であつて、事故時におけるアルコール濃度は血液一ミリリットル中約1.2ミリグラムであつたことから、酒気帯び運転が疑われた。

(二) ところで、「酒に酔つて正常な運転ができないおそれのある状態」といえるか否かは、単に呼気検査または血液検査による呼気濃度のみを判断資料とするのではなく、運転者の普段の飲酒量、事故前の運転状況等諸搬ママの事情を考慮して、綜合的に判断すべきところ、右事実によれば、訴外敏明は普段晩酌もせず酒も好まないものの、田冨方において、仕事を終えた午後五時三〇分ごろから約二時間にわたつて、四人で日本酒銚子二本位、ビール二本位を、出された折を食べながら飲酒し、そのうち訴外敏明の飲酒量は日本酒を盃に三ないし四杯、ビールをコップ一杯位であつたこと、田冨方を辞してのち、訴外敏明は田冨方から町道までの農道約一〇〇メートルは軽四貨物車を後退運転させ、約一〇キロメートル先の福知に所在する「セラ・モータース」までの町道は山の裾野を回り、あるいは道路幅の狭い、特に運転操作に注意を要する道路状況であつたが、格別の運転操作の誤りもみられないまま、右「セラ・モータース」に至り、同店で新車である被害車に乗り換え、積荷もすべて新車に積みかえてのち、約五キロメートル運転して、本件事故現場に至つていること、本件事故の態様をみると、加害車が通称ユニック車と呼ばれるクレーン付自動車であつて、クレーンは車体前部より更に前方へ0.62メートル突き出ていたものの、加害車には車体側面にマーカーランプが左側においても三個設置されていたのであるから、加害車ボディについてはその存在が一見しえた状況であつたのに対し、車体前部より更に前方へ突き出ているクレーンは、加害車が燈火を近目にしていたこと及び事故現場付近が街路灯などの全くない暗い道路であつたこともあつて、被害車からは見にくい位置にあつたものと推認され、右の状況に加えて、加害車を運転していた訴外進藤は加害車の運転操作に不慣れなこともあつて、加害車を後退させるのに手間取り、しかも、あまり急ぐこともなく後退させていたこと、衝突地点は加害車前部においても北進する被害車進行車線上(センターラインより約二五センチメートル北行車線上)であつて、クレーンはなお前方へ0.62メートル突き出ている際の事故であること及び事故態度ママが、加害車ワイヤーロープに被害車右前部を衝突させ、フックに引つかかつた被害車右前側部が加害車前部に衝突したことが認められた以上の事実に加えて、訴外敏明の事故時における血液濃度が血液一ミリリットル中約1.2ミリグラムのアルコール濃度であつて、酒気帯び運転が疑われた事実をも考慮すれば、訴外敏明の本件事故時における運転は、酒気帯び運転中であつたものとはいいうるものの蛇行運転などの異常運転でもなく、自車走行車線を進行していた際の加害車クレーンに対する不注視に基づいて発生した事故であつて、酒に酔つて正常な運転ができないおそれのある状態での運転であつたとまでは認められない。 (坂井良和)

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